「補償割合70%と50%、どちらを選べばいいですか」——ペット保険を選ぶときの定番の問いだ。同じ保険会社のプランでも、補償割合が変わると保険料が変わり、補償される金額の上限も変わる。本記事では、同一会社の中で複数の補償割合を比較できるデータを持つ4社(イーペット、日本ペット、SBI、ニホンペット)を軸に、「プランを上げることで増える保険料に見合う恩恵があるか」を損益分岐点で計算する(出典:各社公式サイト・insurance_premiums テーブル)。
補償割合の仕組みと保険料の差
補償割合とは、かかった医療費のうち保険会社が負担する割合を指す。70%プランなら「医療費の70%を保険会社が支払い、30%が自己負担」という意味だ。ただし上限額がある点に注意が必要で、年間限度額を超えた分は補償割合に関係なく全額自己負担になる。
また、補償割合が高いプランは保険料も高く設定される。一般的な傾向として、同社の70%プランに対して50%プランは保険料が20〜30%程度安い。
同一会社プラン別の保険料差額
当サイトのデータベースで小型犬・複数補償割合のデータが確認できる会社の16年累計保険料を整理した。
| 保険会社 | 50%プラン | 70%プラン | 90%/100%プラン | 年間限度額(70%) |
|---|---|---|---|---|
| イーペット | 819,720円 | 1,002,360円 | — | 60万円 |
| 日本ペット | 884,520円 | 1,237,920円 | 1,591,440円(90%) | 70万円 |
| SBI | 280,152円 | 1,228,392円 | — | 70万円 |
SBIの50%と70%の差が約94.8万円と突出しているが、これは50%プランの年間限度額が30万円と低いため、保険料設計が根本的に異なることを反映している。単純に「補償割合の差」として見るより、「別商品」として理解した方が正確だ。
イーペットと日本ペットは、より標準的な「同一商品での補償割合変更」に近い。
損益分岐点の計算 — 年間いくらの医療費で元が取れるか
補償割合を上げることによる「追加保険料」と「追加補償額」を比較して、損益分岐点を計算する。

イーペット:50%→70%
- 16年間の追加保険料:1,002,360 - 819,720 = 182,640円
- 年間平均追加保険料:182,640 ÷ 16 = 11,415円
- 年間限度額:50%=50万円、70%=60万円(差10万円)
医療費Xが発生したとき、70%プランで増える保険金は(0.7-0.5)×X = 0.2X(年間限度額に達するまで)
損益分岐点:0.2X = 11,415 → X = 年間57,075円
つまり、年間の医療費が57,075円を超えれば70%プランの方が得になる計算だ。犬の平均的な年間医療費(治療費のみ)が4〜8万円程度であることを考えると、イーペットでは70%プランが多くの飼育者にとって合理的な選択になりやすい。
日本ペット:50%→70%
- 16年間の追加保険料:1,237,920 - 884,520 = 353,400円
- 年間平均追加保険料:353,400 ÷ 16 = 22,088円
損益分岐点:0.2X = 22,088 → X = 年間110,440円
年間医療費が11万円を超えれば70%の方が経済的に有利。一方で年間医療費が5万円以下の年が多い場合は、50%プランで余分な保険料を払わない方が総合コストは低くなる。
日本ペット:70%→90%
- 追加保険料:1,591,440 - 1,237,920 = 353,520円(70%→90%も同程度)
- 年間平均追加保険料:353,520 ÷ 16 = 22,095円
損益分岐点:0.2X = 22,095 → X = 年間110,475円
70%→90%でも損益分岐点はほぼ同じ。日本ペットは各プランの保険料が等間隔に設計されていることがわかる。
ケース別シミュレーション
ケース1:健康なミニチュアダックスフンド(年間医療費5万円)
| イーペット50% | イーペット70% | |
|---|---|---|
| 年間保険料(平均) | 4,269円/月 = 51,228円/年 | 5,221円/月 = 62,652円/年 |
| 医療費の保険負担 | 5万×50% = 2.5万円 | 5万×70% = 3.5万円 |
| 実質自己負担(保険料+自己負担) | 51,228 + 25,000 = 76,228円 | 62,652 + 15,000 = 77,652円 |
この条件ではほぼ同等。年間医療費が5万円の場合、イーペットで50%と70%の実質負担差は約1,400円しかない。
ケース2:アトピー性皮膚炎の柴犬(年間医療費15万円)
| イーペット50% | イーペット70% | |
|---|---|---|
| 保険負担 | 15万×50% = 7.5万円 | 15万×70% = 10.5万円 |
| 実質自己負担(保険料+医療費自己負担) | 51,228 + 75,000 = 126,228円 | 62,652 + 45,000 = 107,652円 |
年間15万円の医療費なら、70%プランが年間1.8万円有利になる。
ケース3:腫瘍摘出手術(年間医療費40万円)
| 日本ペット50% | 日本ペット70% | 日本ペット90% | |
|---|---|---|---|
| 年間限度額 | 50万円 | 70万円 | 90万円 |
| 保険負担 | 40万×50% = 20万円 | 40万×70% = 28万円 | 40万×90% = 36万円 |
| 追加保険料(年平均) | 基準 | +22,088円 | +44,183円 |
年間医療費40万円なら、50%→70%で保険金が8万円増える一方、追加保険料は2.2万円。差し引き5.8万円の恩恵があり、70%が明確に有利だ。
犬種・年齢別の補償割合の考え方

補償割合を高めに設定する方が合理的なケース:
- 遺伝性疾患のリスクが高い犬種(トイ・プードル、ゴールデン・レトリーバー等)を若齢期から飼育している
- 慢性疾患(アトピー、心臓病)の既往がある
- 高齢期(8歳以上)に差し掛かり、通院・手術の頻度が上がる可能性が高い
50%プランで十分と考えられるケース:
- 若くて健康な犬で、主に緊急時のリスクヘッジが目的
- 年間医療費がここ数年5万円以下で安定している
- 保険料の総コストを抑えることを優先している
SBIの50%と70%は「プランの差」ではなく「設計の差」
SBIは50%プランの16年累計が280,152円で、70%プランの1,228,392円と約94.8万円の差がある。一見「補償割合を下げれば安くなる」に見えるが、50%プランの年間限度額は30万円で70%プランの70万円の半分以下だ。
SBIの補償割合100%プラン(日額上限あり):実費の100%が補償されるが、通院・入院に1日あたりの上限金額あり。
SBIの50%プランは「低保険料・低カバレッジ」の割り切った設計で、年間医療費が20万円を超えるような年が来ると、年間限度額30万円の壁が早期に来る。医療費が予測しにくい老齢期に差し掛かると、50%プランでは補償が不足するリスクが高い。
内部リンク: ペット保険の基礎知識 / 保険の選び方ガイド
まとめに代えて:補償割合選びの本質
補償割合を上げるかどうかの判断は「追加保険料に対して追加補償がどれだけ増えるか」の計算だ。イーペットでは年間57,075円、日本ペットでは年間110,440円を超える医療費が発生すれば70%が有利になる。ペットの犬種・健康状態・年齢から「どれくらいの医療費が継続して発生しうるか」を考えた上で、追加保険料との比較で判断する。
一般的な健康診断や予防医療で済む年が多いなら低い補償割合でも問題ない。慢性疾患や手術リスクが高いなら補償割合を上げることの恩恵は大きくなる。
データ出典:各社公式サイト・保険料表 / pethokenlab.com データベース(insurance_premiums テーブル、2026年4月現在)
補償割合と年間限度額の組み合わせ効果
補償割合だけでなく、年間限度額との組み合わせが実際の補償力を決める。日本ペットの場合、50%プランで年間50万円、70%で70万円、90%で90万円と上限が変わる。年間医療費が50万円を超えた場合、50%プランは上限で頭打ちになるが70%プランなら最大70万円まで対応できる。つまり「大きな手術が複数重なる年」では補償割合の差以上に年間限度額の差が大きく効いてくる。
高齢期のペットで「通院+入院+手術が同一年内に重なる」ケースは珍しくない。年間限度額がどこで頭打ちになるかも、プラン選択の判断軸として加えることを検討したい。
データ出典:各社公式サイト・保険料表 / pethokenlab.com データベース(insurance_premiums テーブル、2026年4月現在)